なぜ、ゴルフがうまくならないのか? カリスマコーチとして知られる雄士氏に、最新スイング理論のまめ知識と、上達するコツを訊いた。 丸山茂樹とは日本大学ゴルフ部の同期生  雄士(ゆうじ)氏は1969年生まれ、東京都出身。あの丸山茂樹のコーチとして有名だが、二人のもともとの関係は日本大学ゴルフ部の同期生だった。  その後、米国サンディエゴゴルフアカデミーなどで最新のスイング理論を学び、帰国。日本ツアーでプロコーチとして活躍していた氏に、米ツアーに挑戦中の丸山が声をかけた。  当時の丸山は、世界最高峰である米ツアーの厚くて高い壁にぶつかっていただけでなく、体に負担がかかるスイングで、首などに故障を抱えていた。そこで、体にやさしいコンパクトなスイングに改造し、その結果、米ツアー3勝という快挙に結びついた。  現在では、丸山のほか、平塚哲二、矢野東、増田伸洋といったツアープロや、名前を出せない大物プロまで幅広くスイング指導をしている。また、同氏の技術書は爆発的な人気で、驚異的な部数を売り上げている。  そのコーチは、アマチュアがうまくなる方法としてまず、ゴルフに対する考え方、取り組み方がポイントだと語る。 「ハーフショット」を反復練習  「アマチュアはプロと違って、ゴルフをする環境や練習時間が限られています。その制約のなかでうまくなるには、ゴルフをシンプルにすることがとても重要です。そのシンプルの意味とは、頭のなかを整理することであり、スイングの“幹”となる部分を作ることです」。  練習してもうまくならない、と悩んでいるゴルファーのほとんどは、ゴルフを難しく考えすぎて、迷路にはまり込んでいるのだとか。スイングの細かい部分ばかりを気にする傾向があり、木の幹でなく、枝葉の部分にこだわっているという。  「アマチュアの大半は、思考がネガティブになっているので、悩まずに正しくできる動きから練習を始めてみましょう。そこで、本当にいい動きとはどういうものなのかを体感することが大事。そうすれば、新しいフィーリングを身につけることができます」。  コーチが薦めるのは「ハーフショット」の反復練習だ。アマチュアはフルショットのなかでスイングを改造しようとするが、それはプロでも困難なこと。腰の高さのハーフスイングならば、悩まずに、ナイスショットが打てる。まずはここからスタートだ。  新年の誓いで「今年こそ、うまくなる!」と、宣言した人も多いはず。そこで前回に引き続き、雄士コーチによる「ゴルフ上達術」を紹介する。 小さい振り幅で完璧なスイングを作る  「簡単なことから始める」−−というのが流の教え。簡単なことなら悩まない。悩まなければ習得が早くなる。  アマチュアは悩んで悩んで、同じ道を行ったり来たり。悩んだ末に、後退してしまう人もいる。うまくなるには、階段を一歩ずつ確実に上がっていくことが大切だ。  腰の高さのハーフショットでもボールに正しく当たらないのなら、「ひざの高さ」の振り幅から始めるべきだと氏は言う。  小さい振り幅で完璧なスイングを作り、それを徐々に大きくしていけば、最終的に、理想的なスイングが完成する。  アマチュアは目いっぱい力を入れてフルショットすることに充足感を得ているだけに、ハーフショットの練習はつまらなく退屈になってしまうかもしれない。  だが、その反復練習がスイングの「幹」を作ることになる。ゴルフが瞬間的にうまくなる「特効薬」など存在しないのだから、やはり地道な練習が不可欠。 世界の超一流プロたちの練習法はシンプル  氏は4大メジャーなどで世界の超一流プロたちを見ているが、その練習法は、いたってシンプルなもの。いつ見ても同じ練習をしていて、「よく飽きないな」と感心するのだとか。  また、ハーフショットで悩んだら、へそにグリップエンドを当てて、シャフトを握りながらハーフスイングする、というドリルがお薦め。  前傾角度をキープしたまま、体の回転でスイングすることがコツで、グリップエンドをへそに当てていれば、手打ちのスイングを修正できる。  こうすると、腕と体が同調する動きが体得できる。最新のスイング理論では、「腕と体の同調」というのが重要なテーマのひとつであり、同調性を高めれば、フェースローテーションも自然に行なわれるという。  ボールを目の前にすると、アマチュアはスイングどころか「人間」が変わってしまう。ボールに当てようとする意識が悪い動きを生み出すだけに、ボールを打たない「シャドースイング」で正しい動きを身に付けることが肝要だ。  同じスイングでも、ゴルフと野球は似て非なるもの。効率よく上達するためには、ゴルフクラブの特性を正しく理解することが大事だと雄士コーチは言う。  ゴルフは、野球やテニスと同様、道具を使うスポーツである。しかし、ゴルフクラブが野球のバットやテニスのラケットと決定的に異なる部分がある。それは「重心」(スイートスポット)の位置だ。 クラブを「三角定規」としてイメージ  バットやラケットはグリップの延長線上に重心がある。手で握っている部分とボールが当たる部分が同一線上にあるため、道具の操作やボールコントロールが比較的やりやすい。  だが、ゴルフクラブという特殊な道具は、重心がグリップの同一線上になく、シャフトから突き出たフェース(クラブヘッド)にある。その重心の「ずれ」を認識することが重要なポイント。  とくに昨今のドライバーは、ヘッドの大型化によって、むかしより重心距離が長くなり、重心深度も深くなっている。その特性を正しく理解しなければ、真っすぐ打つことも遠くへ飛ばすことも難しい。  そこでコーチは、ゴルフクラブを「三角定規」としてイメージすることを提唱している。 正しいクラブの動かし方とフェースの向きを覚える  「グリップ」とその延長線上のヘッドの「ヒール部分」、そしてフェースの「重心」、この3点を結び、三角定規の板(面)をイメージする。  そのとき、重心距離を伸ばして架空の重心位置を設定し、大きな三角定規をイメージすると、面の意識が作りやすい。一本の棒としてクラブを振るのではなく、三角定規の板を振るつもりでスイングすることがコツだ。  ハーフウェイバックといわれるバックスイングの中間地点(シャフトが地面と平行になるポジション)で、その板の面が体の正面を向き、インパクトではもちろん、ターゲットと正対する。フォローではハーフウェイバックと左右対称の形になる。  大きな板の面をイメージすると、インパクトでフェースが開いたり、閉じたりする動きを防止できる。手首をコネたり、返しすぎたりする無駄な動きがなくなり、正しいフェースローテーションが得られるというわけだ。  「スイングの主役はゴルフクラブであって、腕や体ではありません。ゴルフクラブの正しい動かし方と正しいフェースの向きを覚えることが、上達への最短ルートです」